創作劇
亀池を造った井沢やそべえ
プロローグ
(ナレーター8人)
①T小学校のすぐそばに、大きな池があります。亀池です。
②春になると、2000本以上といわれる桜が咲いて、大勢の人が花見にやってきます。
③今は、県立亀池公園となっていますが、あの亀池は、いつだれが造ったのでしょうか。
④北側の見晴らしのよい大堤の上に、石碑が建っています。
⑤その石碑には、溝の口村の井沢やそべえさんが中心になって造ったと記されていました。
⑥今から300年も前の江戸時代のことです。
⑦やそべえさんは、子どものころから大変学問ができると評判でした。
⑧さあ、村人たちのうわさ話を聞いてみましょう。(退場)
(第一場)
・・・(村人5人登場。やそべえさん)
- 村人A
- ちょっとちょっと、あの井沢さんところのやそべえさんなあ、えらい学問ができるんやてなあ。
- 村人B
- そうらしいなあ。特に算術はすごいらしいよ。うちの子とは大ちがいや。(やそべえ、本を読みながら通り過ぎる。)
- 村人C
- そのことやけどなあ。実は、黒沢山の天狗さんが毎晩やってきて、こっそり教えとるらしいよ。
- 村人D
- そのうわさ、私も聞いたよ。やっぱりほんまかいな。
- 村人AB
- へええ。たまげた。(おおげさにおどろく。)
- 村人C
- それからな、お父はんと紀三井寺さんへおまいりに行ったときになあ。
- 村人E
- その話知っとる。亀の川の堤を歩きながら、「こんなに曲がりくねった川では、洪水が起こって大変やろう。」と言うたんやろ。
- 村人D
- やっぱりただの子どもとちがうなあ。(退場)
(ナレーター2人登場)
⑨こうして、「やそべえさんは天狗の申し子」といううわさは広がって行きました。
⑩大きくなってから、こんな話もあるそうです。(立っている。)
(やそべえ登場して、中央へ。)
- やそべえ
- (家の周りを見回しながら)あの野上八幡宮とこちらの法然寺さんとうちの家が同じ高さにあるように思うんだが。もし、そうなら、由緒ある寺社と同じ高さでは申し訳ないことだ。家を一段低い土地に建て直そう。(退場)
(ナレーター4人、前に立つ。)
⑪やそべえさんは、見ただけで土地の高さを正確に知ることができたんですね。
⑫そんなやそべえさんのうわさが、若山城に住むとの様のところにも伝わったのでしょうか、
⑬28才のとき、2代目の紀州藩主にお仕えすることになりました。
⑭お百姓さんの身分だったやそべえさんは、藩主に仕えるおさむらいになりました。
第二場
・・・ (との様 左手に座っている。やそべえ 右側で手をついている。)
- との様
- 井沢やそべえとはそなたか。これ以後、水を引いて新田開発を行い、川のはんらんも防ぐようにつとめよ。
- やそべえ
- ははあ。けんめいにおつとめいたします。
(2人退場)
⑮やそべえさんは、さっそく紀州藩で一番大きな紀ノ川を見て回りました。
⑯地域のお百姓さんにも、いろいろ聞いてみました。
(やそべえ 右手より、百姓2人 左手より登場)
- やそべえ
- 紀ノ川には豊かな水があるのに、どうして田を作らないのかね。
- 百姓A
- へえ。豊かな水があっても、田より低いところを流れているので、
- 百姓B
- 水を引き入れることができねえんです。
- やそべえ
- なるほど。それではずっと川上から用水路を造ろう。
- 百姓AB
- はあ?
(百姓、首をかしげながら退場)
⑰やそべえさんは、紀ノ川から水を引く計画を実行するのに、
⑱すでに地域で土木工事にすぐれた力を発揮していた
⑲大畑才蔵さんの協力を借りたいと思いました。
- やそべえ
- 大畑才蔵どの。若山城に来て、私に力を貸してもらえまいか。
- 才蔵
- ありがたいおおせですが、私は、生まれ故郷に住み続けたいと思っています。ご用の時はすぐに参りますので、どうか、この願いをお聞き入れください。
- やそべえ
- そうか、分かった。その代わり、呼べば必ず来てくれるのだな。
- 才蔵
- かたくお約束いたします。
⑳こうして、やそべえさんは、才蔵さんと協力して藤崎井用水、小田井用水を造り上げました。
⑪さらに、亀の川下流の曲がりくねったところを真っ直ぐに直して、新しい川に造り替える工事もしました。
⑫この新川の川底は、周りの田んぼよりも高く造って、田に水を流しやすくしているそうです。
⑬堤は高くがんじょうに造り上げました。この堤の上は、今、車も通れる道路になっていますね。
⑭知ってる知ってる。お父さんの車で通ったことがあるよ。
⑮水の流れをコントロールして、がんじょうな堤で洪水を防ぐ、
⑯ここに、「紀州流工法」といわれる原型ができてきています。
⑰さて、いよいよ和歌山県最大の亀池を造る工事に取りかかります。
(第三場)
・・・(やそべえと百姓2人登場)
- 百姓C
- 井沢様、どうか、池の工事は、田んぼの仕事が少ない冬場にお願いいたします。
- 百姓D
- 恐れながら申し上げます。亀の川工事のように、一年九か月もかかりますと、田んぼの仕事もあり困ります。
- やそべえ
- そうだな。正月早々から取りかかって、田の仕事が始まる五月までには造り上げるようにしよう。
- 百姓CD
- ありがとうございます。
- やそべえ
- そのためには、村ごとに工事場所を分担して、必ず期日までに仕上げるように申しつける。よいか。
- 百姓CD
- ははあ。おおせの通りに。
⑱やそべえさんは、工事のきまりを作り、自分の部下の役人にもお百姓さんにもかたく守るようにさせました。
⑲そのおかげで、のべ五万五千人で九十六日間という短い期間で、大きな亀池ができ上がりました。
⑳やそべえさんは、亀池が完成するまで家に帰らず、工事現場に泊まり続けました。だから、完成したときには、病人のようにつかれていました。
(役人、やそべえ、吉宗登場)
- 部下の役人
- 大変です!やそべえ様。藩主の吉宗さまがおこしになられました。
- やそべえ
- (倒れている。)何。おとの様が…。(起き上がる。)
- 吉宗
- くるしゅうない。やそべえ。本日までの働き、礼を申すぞ。
- やそべえ
- ははあ。(頭を下げる。)
- 吉宗
- 三か月にわたり、そなたもさぞ苦労したであろう。
- やそべえ
- いえ、私の苦労など。一番の功労者は、百姓たちでございます。
(エピローグ)・・・
(ナレーター10人登場)
⑪こうして、亀池はできあがったんだね。
⑫あの大堤はすごいよね。高さ16mもあるんだって。
⑬あの幅もすごいよ。12mくらいあるね。
⑭300年たっても、びくともしないんだね。
⑮後々の人たちも、亀池を守り続けてきたからだね。
⑯新亀池も造られているんだよね。
⑰亀の欠から引いている任せ溝もすごい工夫だよね。
⑱ぼくは東畑地区に住んでいるので近いんだよ。
⑲私は、お父さんといっしょに任せ溝を歩いていってみたよ。
⑳私は、やそべえさんの生誕地へ行ってみたよ。
⑪いろんな学習をしてきました。発表したいことはまだまだありますが、今日はこれくらいで終わります。礼。